ヤングケアラーとは?抱えやすい悩みや現状、利用できる支援を解説
目次
家族の食事を作ったり、きょうだいの世話をしたり、病気や障害のある家族を支えることは、家庭の中では珍しいことではありません。
しかし、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などをこども・若者が日常的に担い、その責任や負担によって学校生活や友人関係などに影響が出ている場合があります。このようなこども・若者は「ヤングケアラー」と呼ばれています。
ヤングケアラーは家庭内の問題として周囲から見えにくく、本人や家族自身が負担の大きさに気づいていないケースもあります。
この記事では、ヤングケアラーとはどのような人を指すのか、その現状や抱えやすい悩み、周囲が気づくためのポイント、利用できる支援や相談先について紹介します。
ヤングケアラーとは?
こども家庭庁では、ヤングケアラーを「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこども・若者」としています。
※こども家庭庁の定義ではおおむね30歳未満。特に「こども」は「心身の発達の過程にある者」とし、特定の年齢で必要なサポートが途切れないよう年齢の上限を設けていない
例えば、次のようなケースがあります。
- ●障害や病気のある家族に代わり買い物や料理、洗濯、掃除などの家事をしている
- ●幼いきょうだいの世話をしている
- ●障害や病気のある家族の世話や見守り、看病をしている
- ●目の離せない家族の見守り・声かけ・気遣いなどをしている
- ●日本語を話すことが難しい家族のために通訳をしている
- ●家計を支えるために働いている
- ●問題を抱える家族のケアをしている
- ●家族の入浴やトイレなどの介助をしている
家族の手伝いや世話をすることそのものが問題というわけではありません。
重要なのは、本人の年齢や成長段階に見合わない責任や負担を日常的に担うことによって、勉強や友人との時間、睡眠、進学など、本人の生活や成長に影響が生じていないかという点です。
ヤングケアラーの現状
2020~21年の全国調査では、家族の世話をしている小学6年生は6.5%、中学2年生で5.7%、高校2年生で4.1%、大学3年生で6.2%でした。小学6年生は約15人に1人、中学2年生では約17人に1人に相当し、1クラスに1人以上はヤングケアラーのいる可能性があるといえます。また、小学校の34.1%が「ヤングケアラーと思われる子どもがいる」と回答しています。
一方、一般国民(20~70代の男女)を対象とした調査では、「ヤングケアラー」という言葉を「聞いたことがあり、内容も知っている」と回答した人は29.8%でした。
ただし最近の調査では、中高生の約7割が「聞いたことがある」と回答し、一般の認知度も向上していることから、早期発見と適切な支援へのニーズがさらに高まっています。
ヤングケアラーが抱えやすい悩みや問題
家族のケアを担う時間や負担が大きくなると、こども・若者自身の生活にさまざまな影響が生じることがあります。

学業への影響
家事や介護などに多くの時間を使うことで、宿題や勉強をする時間を十分に確保できない場合があります。
また、家族の世話のために遅刻や欠席が増えたり、授業中に疲れや眠気を感じたりすることも考えられます。
友人関係への影響
放課後や休日も家族の世話が必要になると、友人と遊んだり、部活動に参加したりする時間を確保しにくくなる場合があります。
同年代の友人と過ごす機会が少なくなることで、孤独や孤立を感じることもあります。
心身への負担
家族の介護や家事に縛られることは、身体的にも精神的にも大きな負担となります。
「自分がやらなければならない」「(家族のことは)他人には話しにくい」と感じ、悩みを一人で抱えてしまうケースもあります。
進学や就職への影響
家族のケアを優先するため、希望する学校への進学や就職を諦めたり、自宅から通える範囲に進路を限定したりする場合もあります。
家族を大切に思う気持ちが強いほど、自分自身の希望より家族を優先してしまうこともあるでしょう。
ヤングケアラーはなぜ周囲から気づかれにくい?

ヤングケアラーの課題の一つが、支援が必要な状況であっても表面化しにくいことです。
家庭内で行われている家事や介護は、学校や地域など外部から見えにくいものです。
また、本人にとって家族の世話をする生活が当たり前になっている場合、「自分は大変な状況にある」「誰かに相談してもいい」と気づいていない例も見られます。
家族の方でも、家庭の状況を外部へ相談することに抵抗を感じる場合があります。
そのため、本人から助けを求めるのを待つだけでなく、学校や地域、福祉・医療関係者など周囲の大人が変化や異状に気づき、必要な支援につなげることが重要です。
周囲が気づくために知っておきたいサイン
ヤングケアラーであるかどうかを、外見や一つの行動だけで判断することはできません。
一方で、次のような様子が続いている場合は、その背景に家庭でのケアが関係している可能性も考えられます。
- ●遅刻や欠席、早退が増えている
- ●授業中に眠そうにしていることが多い
- ●宿題や提出物を出せないことが増えた
- ●部活動や学校行事に参加できない
- ●友人と過ごす時間が少ない
- ●家族のことを必要以上に心配している
- ●家族の介護やきょうだいの世話について頻繁に話す
- ●年齢に比べて家事や家族の世話に大きな責任を負っている

画像出典:こども家庭庁 ヤングケアラー特設サイト
| 関係分野(場所) | |
| 教育・保育
(学校、保育所等) |
健康上に問題がなさそうだが欠席が多い、不登校である
遅刻や早退が多い 保健室で過ごしていることが多い 提出物が遅れがちになってきた 幼いきょうだいの送迎をしていることがある など |
| 高齢者福祉
(高齢福祉事業所、地域包括支援センター、自宅等) |
家族の介護・介助をしている姿を見かけることがある
日常の家事をしている姿を見かけることがある |
| 障害福祉
(障害福祉サービス事業所、基幹相談支援センター・相談支援事業所、自宅等) |
同上 |
| 生活保護、生活困窮
(福祉事務所、生活困窮者自立支援機関、自宅等) |
家族の介護・介助をしている姿を見かけることがある
家庭訪問時や来所相談時に常に傍にいる |
| 医療
(病院、診療所、自宅等) |
家族の付き添いをしている姿を見かけることがある
(平日に学校を休んで付き添いをしている場合等) 来院時の本人の身なりが整っていない、虫歯が多い 家族の介護・介助をしている姿を見かけることがある(往診時等) |
| 地域 | 学校へ行っているべき時間に、学校以外で姿を見かけることがある
毎日のようにスーパーで買い物をしている 毎日のように洗濯物を干している など |
| 就労(勤務先等) | 生活のために(家庭の事情により)就職している
生活のために(家庭の事情により)アルバイトをしている |
出典:多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル(一部抜粋)
ただし、こうした様子があるからといって、すぐにヤングケアラーと決めつけることは適切ではありません。
本人の気持ちや家庭の事情を尊重しながら、「困っていることはないか」「何か手伝えることはないか」と話を聞くことが大切です。
ヤングケアラーへの支援が明文化
2024年6月に「子ども・若者育成支援推進法」が改正され、ヤングケアラーへの支援が法律上明記されました。
法律では、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」が、国や地方公共団体などが支援に努めるべき対象として明記されています。
これによって、18歳未満の子どもに限らず、18歳を超えた若者についても切れ目なく支援していくことが重視されています。
ヤングケアラーの問題を「家庭の中だけの問題」にとどめず、学校、自治体、福祉、医療などの関係機関が連携しながら支えていくことが求められています。
ヤングケアラーにはどのような支援がある?
必要な支援は、本人や家庭が置かれている状況によって異なります。
例えば、家事や介護そのものの負担が大きい場合には、家庭で利用できる福祉サービスなどにつなぐことで、本人の負担を軽減可能です。
また、学習面で困っている場合には学習支援、進学や就職について悩んでいる場合にはキャリア支援など、それぞれの課題に応じたサポートを検討できます。
地域によっては、ヤングケアラー同士や元当事者などと交流できる場を設けているところもあります。

(別紙2 ヤングケアラーの負担軽減につながる支援内容(例))
大切なのは、「ヤングケアラーだからこの支援」と一律に考えるのではなく、本人が何に困っているのか、本人や家族がどのような生活を望んでいるのかを確認しながら必要な支援を考えることです。
ヤングケアラーについて相談できる場所
学校では担任の先生のほか、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど、地域では市区町村のこども家庭センター・ヤングケアラー相談窓口、児童相談所などが相談先となります。
こども家庭庁の「ヤングケアラー特設サイト」では、地域や相談方法、希望するサポート内容などから相談窓口を検索することもできます。
家族が介護や生活に困っている場合には、高齢者福祉、障害福祉、医療などの支援機関につなぐことで、こども・若者の負担を減らせることもあります。
周囲の大人にできること

ヤングケアラーを支えるために重要なのは、「家族の世話をさせない」などと一方的に考えることではありません。
支援を求めてよい状況であること、ヤングケアラー本人や家族への支援策があることを知ってもらうには、周囲の大人・専門機関のサポートが不可欠です。
学校、福祉、介護、医療などに関わる大人が違和感や普段と違う様子に気づいた場合には、本人の話を聞き、必要に応じて専門機関や支援制度につなぐことが求められます。
こども・若者自身の希望や心情を尊重しながら、家族全体を支える視点を持つことが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. どのような人がヤングケアラーにあたりますか?
病気や障害のある家族の介護、幼いきょうだいの世話、料理や洗濯などの家事、家族のための通訳など、本来大人が担うと想定されている役割を日常的(過度)に担っているこども・若者と定義されています。
Q2. ヤングケアラーにはどのような問題が起こりやすいですか?
家族の世話に多くの時間を費やすことで、勉強や睡眠、友人と過ごす時間などを十分に確保できないなど心身に負担がかかります。また、進学・就職など将来の選択に影響する場合もあります。
Q3. ヤングケアラーにはどのような支援がありますか?
本人や家庭の状況に応じて、相談支援や福祉サービス、家事・生活の支援、学習支援などにつながる場合があります。利用できる支援は地域によって異なるため、自治体の窓口などに相談してみましょう。
Q4. ヤングケアラーについてどこに相談すればよいですか?
学校の教員やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、市区町村のこども家庭センター、自治体の相談窓口などがあります。こども家庭庁のWebサイトから地域の相談窓口を検索することもできます。
まとめ
ヤングケアラーは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的(過度に)に行っているこども・若者を指します。
家族を支えることが問題なのではなく、本人の年齢や成長段階に見合わない責任や負担によって、学業や友人関係、心身の健康、進路などに影響が生じていないかに目を向けることが大切です。
ヤングケアラーの問題は、本人だけで解決するものではありません。家族が必要としている介護・福祉サービスなどにつなげることで、こども・若者の負担を軽減できる場合もあります。
家庭内で抱え込まず、学校や自治体、福祉・医療などの関係機関とつながりながら、本人と家族の双方を支えていくことが重要です。
介護・福祉について学びたい方へ
ヤングケアラーについて考える際にも、ヤングケアラー本人だけでなく、その家族を含めた生活全体に目を向けることが大切です。
介護の仕事では、利用者一人ひとりの状態や生活環境を理解し、本人や家族に必要な支援を考えるための知識や技術が求められます。
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出典・参考
・こども家庭庁「ヤングケアラーについて」
・こども家庭庁「ヤングケアラーを知っていますか?(ヤングケアラー特設サイト)」
・厚生労働省「令和5年版厚生労働白書-つながり・支え合いのある地域共生社会-(本文)」