目次
働く世代にとって、家族の高齢化や病気・障害などに伴う「介護」の問題は、決して縁遠いものではありません。
介護が必要な家族を支えながら働き続けることに、不安を感じている方も少なくないでしょう。「仕事を辞めないと介護はできないのでは?」と悩む前に知っておきたいのが、「介護休業制度」です。

介護休業制度は、仕事と介護を両立するために設けられた制度です。一定の条件を満たせば介護のために休業でき、雇用保険から「介護休業給付金」を受けられる場合もあります。
この記事では、介護休業制度の概要や取得条件、取得できる日数や介護休業給付金、介護休暇との違いなどをわかりやすく解説します。
介護休業制度とは?
厚生労働省では、「介護をしながら、より働きやすい社会へ」をテーマに、2025年に育児・介護休業法を改正し、介護休業制度の充実を進めています。
日本では高齢化の進展に伴い、介護と仕事を両立しなければならない人が増えています。総務省の「就業構造基本調査」によると、家族の介護をしながら就業する者は10年で73万人以上増加し、約365万人に達しました。55~59歳の雇用労働者では10人に1人以上が介護に直面しているとされており、誰もが仕事と介護の両立を考える可能性があります。

介護休業制度は、このような状況に対応するため、介護を理由とした離職を防ぎ、働きながら家族の介護を続けられるよう支援する制度として創設されました。
2025年4月からは制度がさらに充実し、企業による制度の周知や意向確認が義務化され、より利用しやすい環境づくりが進められています。
介護休業制度の対象
介護休業は、要件を満たす労働者であれば利用できます。
対象となる家族は、要介護状態にある配偶者(事実婚を含む)、父母、子(法律上の親子関係がある子。養子含む)、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母です。同居の有無は問われません。

要介護状態とは
負傷や疾病、または身体・精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態。
介護保険の要介護認定を受けていることが利用の必須条件ではありません。
介護休業は何日取得できる?
介護休業は、対象となる家族1人につき通算93日まで取得できます。93日間を一度に取得するだけでなく、最大3回まで分割して取得することも可能です。
例えば、次のような取り方ができます。
- 1回目:30日
- 2回目:30日
- 3回目:33日
- 合計:93日
対象家族が複数いる場合は、それぞれの家族について通算93日まで取得できます。母親の介護で93日、父親の介護で93日という取得も可能です。
なお、希望する日から休業するには、原則として介護休業開始予定日の2週間前までに勤務先へ申し出る必要があります。
介護休業の考え方
長く続く可能性も高い介護に対して、最大93日は短いと感じるかもしれません。
介護休業は「労働者が介護をすべて担うための期間」ではなく、地域包括支援センターやケアマネジャーへの相談、介護サービスの手配、家族の役割分担など「仕事と介護を両立できる体制を整えるための期間」としての活用が推奨されています。
約3か月の準備期間を設けることで、専門家や家族と相談しながら介護の長期的な方針を定め、仕事との両立環境を構築していく。これが介護休業制度の基本的な考え方となります。
介護休業給付金とは?
介護休業給付金とは、介護休業による収入減を補うために、雇用保険から支給される給付金です。
介護休業中は給与が支払われない、または減額となるケースが一般的ですが、介護休業給付金を利用することで経済的な負担を軽減しながら、介護に必要な時間を確保できます。
介護休業給付金の受給要件
介護休業給付金を受け取るには、主に次の要件を満たす必要があります。
雇用保険の被保険者であること(原則、開始日前2年間に12か月以上)
- 対象家族の介護のために介護休業を取得していること
- 休業期間中の就労日数が一定以下であること
- 休業中に支払われた賃金が休業開始前賃金の一定割合以下であること
通常は勤務先を通じ、ハローワークに申請します。
支給額の目安
1支給単位期間ごとの給付額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」により算出します。
例えば、休業前6か月間の平均月給が30万円の場合は、支給要件を満たすことで月額約20万円(67%相当)が介護休業給付金として支給されるイメージです。※実際の支給額は賃金日額や休業日数などにより異なります。
介護休業と介護休暇の違い

介護休業制度では、介護休業と介護休暇が取得できます。どちらも仕事と介護を両立するための制度ですが、利用目的が異なります。
| 介護休業 | 介護休暇 | |
| 目的 | 介護と仕事の両立体制の構築 | 日常的な介護へのスポット対応 |
| 取得日数 | 対象家族1人につき通算93日まで
(最大3回に分割可) |
対象家族1人なら年5日まで、
2人以上なら年10日まで |
| 取得単位 | 日単位 | 日または時間単位 |
| 給付金 | あり(介護休業給付金) | なし |
| 利用場面 | ケアプランの相談、施設探しほか介護サービスの準備と手配、家族との話し合いなど | 病院への付き添い、ケアマネとの面談、
役所での手続きなど |
介護休業は、介護が始まった直後に介護体制を整えるための制度です。一方、介護休暇は、介護サービスの利用開始後も継続的に発生する通院や各種手続きなどに、スポット的に対応するために利用できます。
介護と仕事を無理なく両立するためには、それぞれの制度の特徴を理解し、状況に応じて使い分けることが大切です。
介護休業制度を利用する流れ
介護休業制度を利用する場合は、事前に勤務先へ申し出を行い、必要な手続きを進めます。一般的な流れは次のとおりです。

介護休業制度を利用するメリット
仕事と介護を両立しやすくなる
雇用を維持しながら、一人ですべての介護を抱え込まなくてもよい「両立体制」を整えやすくなります。
給付金を受けられる
一定の要件を満たせば介護休業給付金(原則として介護休業開始前賃金の67%)を受給できるため、休業中の収入減を一定程度補うことができます。
利用する際の注意点
介護休業制度を利用する際は、次の点に注意しましょう。
- ●介護休業は対象家族1人につき通算93日まで
- ●給付金には支給要件・上限がある
- ●給付申請期間は休業終了日の翌日~2か月後の月末
- ●会社ごとに申請手続きが異なる場合がある
- ●介護休暇や短時間勤務制度なども活用できる場合がある
介護は長期間に及ぶことも多いため、一つの制度だけでなく複数の支援制度を組み合わせることが大切です。
よくある質問(FAQ)

Q1. 介護休業は何日まで取得できますか?
対象家族1人につき通算93日まで取得できます。また、最大3回まで分割取得することが可能です。
Q2. 介護休業給付金を受け取るには条件がありますか?
主な受給要件は次のとおりです。
- 雇用保険の被保険者であること
- 介護休業開始前2年間に、被保険者期間が原則12か月以上あること
- 対象家族の介護のために介護休業を取得していること
なお、有期雇用労働者には追加の要件があります。
Q3. 介護休業給付金はいくらもらえますか?
支給額は、休業開始時賃金日額×支給日数×67%で計算されます。
例えば、介護休業前の平均月給が30万円程度の場合、支給額の目安は約20万円です。
Q4. 介護休業中に働いても給付金は受け取れますか?
一定の範囲内であれば受給できます。
ただし、1支給単位期間の就労日数が10日を超える場合は、その期間の介護休業給付金は支給されません。また、休業中の賃金が一定額以上支払われた場合は、給付金が減額または支給されないことがあります。
Q5. 介護休業は2週間以上でないと利用できませんか?
「2週間以上の常時介護が必要な状態」とは、介護が必要な家族の状態を指します。そのため、介護休業自体は10日間などの短期間でも取得でき、支給要件を満たせば介護休業給付金の対象となります。
Q6. 同じ家族で再び介護が必要になった場合、もう一度取得できますか?
同じ対象家族については、93日分の介護休業給付金を受給すると、その後に要介護状態が変わった場合でも、新たに93日分の給付を受けることはできません。
まとめ
介護休業制度は、家族の介護が必要になった際に、仕事を辞めずに介護と両立するための重要な公的制度です。対象家族1人につき通算93日まで取得でき、介護休業給付金を受給できる場合もあります。
介護は一人で抱え込まず、介護休業制度や介護保険サービス、地域包括支援センターなどの支援制度・
を手に活用しながら、無理のない介護体制を整えることが大切です。制度を適切に利用することは、介護離職の防止にもつながります。
なお、制度の利用条件や申請方法は勤務先によって異なる場合があるため、介護休業を検討する際は、事前に人事・総務担当者へ確認しておくと安心です。
介護の知識を深めたい方へ
家族の介護をきっかけに、「介護の基本的な知識や技術を身につけたい」「介護の仕事にも興味がある」と考え始める方は少なくありません。
未来ケアカレッジの介護職員初任者研修は、介護の基礎知識や介助技術を体系的に学べる入門研修です。未経験の方でも受講しやすく、家族介護にも役立つ知見やスキルを身につけることができます。
介護を基礎から学びたい方は、未来ケアカレッジの介護職員初任者研修で学んでみませんか。
熟練講師の指導で、初心者も安心して基礎から学べる環境をご用意しています。まずはお気軽に資料をご請求ください。
出典・参考
- 厚生労働省「介護休業制度特設サイト(介護休業)」
- 厚生労働省「介護休業制度特設サイト(介護休暇)」
- 厚生労働省「介護休業給付Q&A」